第8回 高尿酸血症フォーラム in  久留米内科医会(H25.9.9)

日時:平成25年9月9日

特別講演  「どこまで高尿酸血症を治療すべきか  ~酸化ストレスと尿酸 との関係~」

演者  九州大学病院 循環器内科 講師   井手 友美 先生

症例提示  「蛋白尿陰性CKDの検討 高尿酸血症との相関について」

社会医療法人天神会 新古賀クリニック 院長 宮本 祐一 先生

<井手先生の研究テーマである、心不全と酸化ストレスおよびミトコンドリ アに関しての内容で+講演がスタートしました>

酸化ストレスとは、活性酸素が産生され障害作用を発現する生体作用と、 生体システムが直接活性酸素を解毒したり、生じた障害を修復する作用との間で均衡が崩れた状態のことです。活性酸素は体内では、呼吸で取り込んだ酸素をミトコンドリアの電子伝達 系で使用して水が出来る際や、感染時の白血球が炎症反応をおこす際やアラキドン酸の代謝時に産生されます。

活性酸素は細胞のDNAや細胞膜上の脂質、蛋白質等を障害し、アテロー ム動脈硬化症やパーキンソン病、心筋梗塞、アルツハイマー病、慢性疲労症候群など様々な疾患の発症に関与しているといわれています。

心筋障害から心不全に至る過程では交感神経系、R-A系、サイトカイン の活性化とそれによってもたらされる心筋のリモデリング(Hypertrophy, Fibrosis,Apotosis)が深く関係しています。 そのために、βー遮断薬、 ACE阻害薬、A-Ⅱ受容体拮抗薬が心不全には使われてきました。しかし、心不全患者の予後の改善率はわずかであり、心不全における新た な分子機序の解明と治療の開発が求められています。

  そこで、心不全においての酸化ストレスの関与が検討されています。実際調べてみると、不全心ではキサンチンオキシダーゼが増加しており、活性酸素が多く産生されている状態とのことです。またミトコンドリアDNAに注目してみると、正常DNAは減少しDNAの変異が 認められて活性酸素が作られやすくなっており、さらに電子伝達系の機能低下によりATP産生が減少するばかりでなく、活性酸素の生成もさらに亢進しています。そして、それがDNAを傷害し電子伝達系の傷害へと悪循環を来します。活性酸素は直ちに消去されるものですが、悪循環が一度形成されると、活 性酸素の産生が亢進され続け細胞質の蛋白や脂質がターゲットとなり、心不全が形成されると考えられています。以上のことから、心不全においてはミトコンドリアでの酸化ストレス産生 が非常に重要な位置を占めており、ミトコンドリア酸化ストレスの制御を標的 分子とした治療が研究されています。

<尿酸代謝および高尿酸血症>

尿酸はDNAやRNAなどの核酸や、細胞のエネルギーの貯蔵を担うATPの素に なるプリン体の最終代謝産物です。プリン体は食事から摂取されるルート(約20%)と細胞内で生合成される ルート(約80%)があります。   細胞は過剰なプリン体やエネルギー代謝で不要になったプリン体を、キサ ンチンオキシダーゼ(XO)という酵素により尿酸に変換し細胞から血液中に排 出します。

体内の尿酸の総量は通常は一定に保たれます。(尿酸プール約1200mg)1日に約700㎎の尿酸が産生され、尿中に500㎎、腸管等に200㎎が排泄さ れます。余分な尿酸は尿酸塩結晶となり組織に沈着したり、結石となります。

多くの生物はウリカーゼという酵素を持ち、尿酸を水溶性の高いアラント インに代謝し尿中に排泄します。ヒトやチンパンジーや鳥類はウリカーゼを持たないために、血清尿酸値が 高くなりやすいのです。

尿酸の約3/4は腎臓から尿中に排泄されます。糸球体では100%濾過さ れますが尿細管で再吸収され、6~10%のみ対外へ排出されます。尿酸の再吸収や分泌のトランスポーターが明らかになり、再吸収では近位 尿細管の管腔側膜にURAT1、血管側にGLUT9が、分泌では管腔側にABCG2が同定されています。

腎障害としては、尿酸の結晶が沈着しておこる痛風腎の他に、結晶沈着を 介さない腎障害である慢性腎臓病(CKD)も存在します。

高尿酸血症のタイプは、尿酸産生過剰型(約10%)、尿酸排泄低下型 (約50~70%)、混合型(約20~30%)に分類されます。病型を分類するために、簡便法では尿中の尿酸とクレアチニンの比を算出し、その比が0.5を上回った場合には尿酸産生過剰型、0.5未満の場合には尿酸排泄低下型と分類します。

 <治療>

「高尿酸血症、痛風の治療ガイドライン」に従い治療します。痛風や合併症のない無症候性高尿酸血症では血清尿酸値9.0mg/dl を薬物療法の導入の目安とします。痛風のある場合は7.0mg/dl以上で開始します。

治療目標は、血清尿酸値6.0mg/dl以下です。 6.0mg/dl以下で 痛風関節炎がほぼ完全に消失したというデータがあり、積極的に低下させる必要があるとのことです。

尿酸生成抑制薬:XOを阻害し尿酸の生合成を抑制します。アロプリ ノールフェブキソ スタット

尿酸排泄促進薬:URAT1による尿酸再吸収を抑制します。プロベネシド ベンズブロ マロン

尿路結石の既往や中等度以上の腎機能障害では尿酸生成抑制薬の適応です。簡便法で病型をみて治療を開始するのが最良ですが、病型が不明のとき は、尿酸生成抑制薬から投与開始する場合が多いようです。アロプリノールを排泄低下型に投与すると、アロプリノールの活性代謝 物であるオキシプリノールが尿酸と排泄機構を共有するため、オキシプリノールも排泄されずに副作用が出現するために要注意です。

高尿酸血症はメタボリックシンドローム(MS)などの既知の動脈硬化危険因 子と合併することが多く、高尿酸血症自体が独立してMSや心血管障害を惹起するのかどうかは確証が得られていません。しかし血清尿酸値を上昇させた動物実験で炎症性サイトカインや増殖因子 の活性化、フリーラジカル産生と酸化ストレスの促進、一酸化窒素(NO)の産 生障害、COX-2産生亢進、R-A系の活性化などを介して、血管障害性に作用 していることが証明されています。その他、糖尿病(インスリン抵抗性)や高血圧(R-A系活性化)、脂質 異常症、CKD(腎細小血管の動脈硬化)などの疾患の進展にも、尿酸やキサンチンオキシダーゼ、活性酸素がそれぞれ単独あるいは各々が 組み合わさって関わっているというデータが出てきています。

  これまでさほど重要視されていなかった感のある高尿酸血症も研究が進む につれて新しい発見がなされ、さらにデータが集積し、治療もますます進展していく事と思われます。 また、酸化ストレスを軽減させるようなターゲットセラピーが開発されて いくと、より多くの疾患の進展が抑えられていくものと考えられます。

今回の井手先生の講演は、最新の研究データでわかり易く教えて頂きまして、不得意な分野でしたが大変勉強になりました。

                         広報委員     松枝俊祐

カテゴリ: 2 活動報告  

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